大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和50年(行ツ)99号 判決 1976年3月19日

大阪市城東区今福南一丁目一五二番地

上告人

山本悦司

右訴訟代理人弁護士

野村清美

大阪市城東区野江東之町一丁目四八番地

被上告人

城東税務署長

山本淳二

右当事者間の大阪高等裁判所昭和四八年(行コ)第三八号所得税更正処分等の取消請求事件について、同裁判所が昭和五〇年六月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人野村清美の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、その過程に所論の違法は認められない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであって、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 吉田豊 裁判官 本林譲)

(昭和五〇年(行ツ)第九九号 上告人 山本悦司)

上告代理人野村清美の上告理由

第一点 原判決には理由不備もしくは理由齟齬の違法がある。

原判決は、「被控訴人の父母である山本重治、同ヨシエは、山本重治の義兄弟である西川政五郎の仲介で、その友人である若葉石油株式会社の代表者金高悦二に、本件土地をドラムかん置場として使用させた。この土地を使わせるにつき、賃料とか使用料等は貰っておらず、その土地を使わせるについて取り決めを何もしておらず、本件土地の使用は使用貸借であった」「大金石油の本件各一二万円の支払は、金高悦二の山本ヨシヱに対する債務の弁済である」との主張につき「被控訴人には、昭和三七年、昭和三八年にそれぞれ一二万円づつの右地代金の収入があったものと解するのが相当であり」と認定している。

凡そ土地所有者がその所有土地、しかも三三〇平方米(一〇〇坪)以上の土地を第三者に賃貸する場合、賃貸借に関する契約書を作成せず、賃料の定めをなさず、勿論賃料の支払方法を定めず賃貸することがあり得るであろうか。しかも数年間賃料の支払請求をしたことが無い、などの事例があるであろうか。本件について見るとき被控訴人と大金石油との間に土地賃貸借に関する契約書は存在せず、賃料に関する取決めは勿論その支払方法の取決めも存しない。従って賃料の支払を請求した事実も無い。何故賃貸借に関するこれらの書類が作成されず、賃貸借契約条件を定める行為が存在しないかについては、前記のとおり特別な事情のもとに大金石油の無償使用(ドラムかん置場として)を認めたことに因るものである。

然るに原判決は右のように賃貸借契約の成立につき法律上および社会経験則上充たされるべき条件が全く充されていない本件土地の使用貸借につき賃貸借契約関係が存在すると認定し、賃料の支払があったと認定したことは、社会経験則に違背し、その採証法則の違反をおかし理由不備若くは理由齟齬を来たしたものである第一審判決は使用貸借および賃貸借の相違を適格に判決し、社会経験則に則した判断を下したものといえる。

よって原判決は破毀を免れないものである。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例